396:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 03:11:02.47 ID:i8RmR7sP0
6月になると、
冬に板尾と一緒に申し込んでいた
コミケの当落発表があった。 
結果は落選。 
なんということか。 
俺はそに子と一緒に何か本を出すつもりでいた。 

目的を失った気がした。 
そこに、去年の冬のコミケで
一緒にサークル参加した板尾の友人から連絡があった。

http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1323617346/
397:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 03:15:37.13 ID:gk095lTZ0
うおお追いついた…! 
俺も漫画家目指して漫画アシしてる。
読んでてすごく元気になったし楽しみにしてるよ!

398:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 03:15:57.05 ID:i8RmR7sP0
友人「コミケ、どうだった?」 
俺「いや、落ちちゃったよ…ダメだった。」 
友人「そっか…それなら前回と同じように僕のとこで本を出しなよ」 

なんと、またしても板尾の友人が俺を助けてくれた。 
これには俺とそに子は二人して大喜びした。 
本が出せる。コミケで。

399:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 03:18:46.00 ID:i8RmR7sP0
>>397 ありがとう、最後まで付き合ってくれたら嬉しいです。

402:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 03:23:52.30 ID:+4uQiR3DO
板尾の友人いいひとだね 
いいひとたちに囲まれてる

403:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 03:27:38.12 ID:i8RmR7sP0
こんな感じで、6,7月は
ぼちぼち大学に通いながら 
コミケに向けた絵を描いていく日々だった。 

そに子は一緒に合同で
イラスト本を出すと言っていたが、
まだデジタルで彩色が上手くできないという事で
駄々をこねられた。 

なので、結局はそに子はコピーの折り本を、
俺は個人誌を出すことにした。 
彩色以外は、綺麗な線を描くし、
正直俺と対して変わらなかったんじゃないだろうか… 

あと、書き忘れてたけど
そに子は俺と同じ美術部に入部しています。 
でも、特に部活で書くようなイベントがなかったので
割愛してしまいましたw

404:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 03:29:22.35 ID:i8RmR7sP0
>>402 そうなんだよね。
振り返ってみて改めて思うけど 
俺は本当いい人達に囲まれて生きてきたなって思うよ。

407:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 03:36:59.65 ID:i8RmR7sP0
俺は、今まで漫然とただ絵を描いていた。 
ずっと描き続けて、
いつかイラストレーターみたいになれたら… 
そんな甘美な夢を見ていた。 

でもこの頃から
明らかに意識は変わっていたと思う。 
よく分からないけど、
コミケのイラスト集の絵はただひたすら 
集中して描いていた。 

それでもたまにそに子から絵の相談を受けたりするので、
そんな時は楽しく絵チャとかやったりして、
マッタリ絵を描くこともあった。

408:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 03:43:19.93 ID:i8RmR7sP0
板尾の死は、
よくも悪くも俺を変えた。 
もう自信作を描いても、
「いいじゃんそれ!」 
と言って笑う板尾はいないんだから。 

コミケの原稿も一段落した8月の初旬
、俺は美術部の合宿に行った。
もちろんそに子も一緒に。 
夏合宿。まあ、楽しいレクリエーションだ。 

みんな夜通し語り明かしたりもする。 
俺はこの合宿で相談したい相手が居た。

409:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 03:43:54.09 ID:TsjlM4fB0
お前の絵が早く見たい。 
お前の優しさとか人格がこの文章からよく伝わってくる。きっといい絵を描くんだろうなって思った

410:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 03:47:08.47 ID:i8RmR7sP0
>>409 ありがとう。
この話を最後までみんなにできたら、
うpもいいかもしれない。 
ただ、本当に期待しないほうがいいよw
俺まったく上手くはないから。

411:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 03:58:59.57 ID:i8RmR7sP0
一個上の部長。 
部長は、芸大受験の経験もある、
かなりアーティストな人だった。 

そう、俺はこの時決心していた。 
東京学芸大の中等美術科に行って、
美術教師になってやる… 
そのためには大学を辞めることや
仮面浪人もいとわなかった。 
夢が、見えた気がした。 

芸大や美大受験とはさすがに勝手が違うが、
それでも部長の意見を聞いてみたかった。

412:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 04:00:57.91 ID:i8RmR7sP0
とりあえず、もう4時になってしまったので
一旦今日はここで休憩にします。 
見てくれた人、本当にありがとう。 
また明日の夕方〜夜あたりに続き書きます。
落ちたりしないよね?

414:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 04:06:49.21 ID:1EaWOpnn0
おつかれ。 
+だからそうそう落ちたりしないんじゃないかな。 
もし落ちてたら同名で立ててくれれば探すよー

416:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 04:11:29.59 ID:+4uQiR3DO
>>1 
おつですー 
今日一日深く考えさせられましたわ 
自分も昔漫画家目指してたからなぁ。。 
ゆっくり休んでください 

417:名も無き被験体774号+2011/12/13(火) 04:16:01.90 ID:tchx8SFt0
そうか……板尾が亡くなったか… 
本当に大事なものって
なくなった後からじゃないと気付かないんだよな。 
それでもうダメだ、生きれないよと感じるけど
やっぱり前を向いて
その人がいない日々を
一生懸命生きていかなくちゃいけないんだよな。

425:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 05:38:34.45 ID:DN+0k0Ch0
最後まで読んだら俺も一歩踏み出せる気がする

442:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 17:02:42.36 ID:P1VUjXiJ0
みんなこんにちは。 
 こんな時にアクセス規制くらって、
どうしようかめっちゃあわてた。 
 なんとか2ちゃんビューアを導入して戻ってきた。 

ここまで読んでくれてありがとう。
これを読んで何か感じてくれたなら嬉しい。 
 時間があったら是非最後まで付き合ってください。 


443:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 17:10:18.61 ID:P1VUjXiJ0
今日も、ぼちぼち続きを書いて行きたいと思います。 
話は折り返し地点くらいまできました。

445:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 17:12:27.79 ID:Wl6eAC7i0
待ってたよ! 

448:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 17:17:03.74 ID:P1VUjXiJ0
夏合宿。 
みんな浮かれ気味である。 
俺たち美術部一行は、
とある片田舎の避暑地に行った。 

バスでは、俺とそに子は隣に座らなかったが、 
それをひたすらにブーイングされた。 
なんだかんだで遠藤と仲よかった俺は、
何故か遠藤の隣だった。 

遠藤「今年の一年女子をこの合宿で見極める…」 
俺「がんばれよ」 

でも遠藤は途中からバス酔いしたので
静かで楽だった。

451:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 17:23:52.54 ID:P1VUjXiJ0
夏合宿では海に行くか
高原に行くか半々くらいだった。 
女子が多い部活。 
俺は正直海に行きたくて仕方なかった。 

でも行き先は高原だった。 
俺「着いた〜バスって楽しいねえ修学旅行みたい」 
遠藤「水…水…」 

コテージ?ログハウス?
なんて言うんだろうそんなとこに皆で泊まる。 
でも管理人の老夫婦がいたし
民宿にも近いのかな。

453:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 17:30:06.93 ID:P1VUjXiJ0
俺「すごいなここ、バドミントンとかバスケ、テニスで自由に遊べるのな」 
遠藤「バスケしようぜ〜」 

近くには牧場もあったり、
自由にスポーツできたり。 
緑が綺麗でとてもいいところだった。 

そに子「華丸さんバドミントンしようよ〜」 
俺「遠藤、そういうことだから。」 
遠藤「いやいや混ぜてくれよ」 

454:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 17:34:43.77 ID:P1VUjXiJ0
この時ばかりは
青春ってやつだったかもしれない。 
今思い出すとむずがゆい、でも楽しかった。 

明るいうちはみんなでバドミントンとかして、 
近くの小川に行って裸足で入って足怪我したり。 
食べれる野草を見つけてみんなで騒いだり。 

夜には肝試しでお化け役になって
樹の枝に腕ひっかけてすりむいたり。 

けっこう怪我したwでも楽しかった。 


456:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 17:44:21.59 ID:P1VUjXiJ0
夜。自由時間。 

夕飯も終わってみんなマターリタイムである。 
俺は建物の外で
まだ吸い始めたばかりの煙草を吸っていた。 

そうすると、部長がきた。 
部長「くさいよ、それ」 
俺「あ、すいませ…部長相談があるんです。」 

部長「何よw 改まっちゃってw」 
俺「俺大学多分やめます」

457:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 17:48:47.53 ID:P1VUjXiJ0
部長「何トンチンカンな事言ってんの?」 
俺「いや、だから…俺は美術教師になりたいんですよ、はい…」 

部長「初めて聞いたな」 
俺「そのためには、今の大学じゃ絶対無理じゃないですか。 
やめて、今から美大は厳しいですから、学芸の中等美術科に…」 

部長「うんうん、分かった分かったちょっと待って。」 
俺「はい…」 
部長「華丸は中高で美術部の経験があった?」 
俺「いえ、まったく…高校では一度も美術の授業すらなかったです…」

459:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 17:56:43.53 ID:P1VUjXiJ0
部長「じゃあ、美術の先生がどんなことするか、どんな人かも分からないんだね」 
俺「まあ…そうなります…」 

部長はいつになく真剣だった。
部長はスタイルがよくて、 
ハキハキしていて、出来る女性って感じだった。
だから尚更気迫があった。 

部長「華丸がなんで急にそんなこと言い出したのかは分からない。 
まあ、なんとなく察しもつくんだけど… 
よく考えた方がいいよ。
そんなに甘いもんじゃないよ。」 
俺「で、でも…」 

部長「こんな言い方してごめんね。
でももしそれで大学やめて
美術の先生になれなかったら? 
なれたとして、一生続けられるかな。」 

部長は芸大受験に何回か失敗してからうちの大学に来ていたから、 
学年一個上とは言え、歳は離れていた。

460:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 18:06:26.23 ID:P1VUjXiJ0
俺はもしかしたら、
「頑張れ」とか「応援してる」とか 
そういう言葉を期待していたのかもしれない。 

学芸の受験自体は、
実技がそこまでできなくても 
勉強をめっちゃ頑張ってセンターでいい点をとれば
可能性はあるかもしれない 
ということも分かっていた。 

だから部長みたいな人に
背中を押して欲しかったんだろう。 
俺は落ち込んだ。 
一歩踏み出す、きっかけを与えて欲しかった。

461:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 18:13:38.06 ID:P1VUjXiJ0
そんなこんなで、
期待していた夏合宿は終わりを迎える。 
俺はここで心機一転するはずだったのに…と
落ち込んでいた。 
完全に他人に頼っていたと思う。 

でも俺は挫けなかった。 
夢を追えなかった板尾のことを思うと、
美術教師は諦められなかった。 

この時の俺は本当に取り憑かれたように
美術教師になる、って言ってたんだけど 
それが本当の自分の気持ちだったのか、 
板尾に対する自分の想いだったのかは、
未だによく分からない。

462:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 18:20:28.64 ID:P1VUjXiJ0
合宿が終わると、 
助けを呼ぶ声があった。 
コミケで本を置かせてもらうことになっている板尾の友人だった。 

友人「華丸君、今ヒマかな?原稿がやばいんだよ、手伝ってくれないかな…」 
俺「おお、いいよいいよ。そんなにやばいんか。」 

夏のコミケの締め切りギリギリ。
まさに友人は修羅場状態であった。 
そして、この一本の電話が俺にとって
大事な分かれ道だった。

463:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 18:26:23.55 ID:P1VUjXiJ0
俺は美大近くの友人の家に行った。 

友人「ごめんねー手伝わせて」 
俺「いいよいいよーそれより聞いて欲しいんだけど」 
俺たちは作業しながら会話をした。 

友人「どうしたの?」 
俺「今から、学芸行って美術教師になりたい、それって難しいのかな」 
友人「そんなことないんじゃないー?」 

軽い。予想外の反応だった。 

友人「俺の友達で学芸とか教育系の美術科?受けてここに来た子とかいるよー」 
俺「え、本当に?」

464:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 18:32:19.08 ID:P1VUjXiJ0
友人「その子、板尾とも仲良かったよ?もしかしたら会ったことあるんじゃない?」 

俺は記憶の糸をたぐりよせた。
確かに去年はよく板尾の美大に潜り込んで、 
色んな人と関わった。 

俺「なんて子?」 
友人「石田だよ、石田。」 
俺「あ、俺その子知ってるよ……」 

その子は石田ゆり子にちょっぴり似ているので石田と呼ぶ。

465:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 18:42:41.74 ID:P1VUjXiJ0
そもそも、石田さんとは
そに子と初めて会う前から面識があった。 

大学1年の5月くらいに
もう会っていた気がする。 
板尾が美大の連中を色々紹介してくれた時に、
その中にいたって感じだった。 

まだまだ異性に距離を置いていた時だったし、 
もちろん連絡先も知らなかった。
会ったことも4,5回あるくらいだった。 

美大に遊びに行った時に、
構内で出くわせば、
「あ、ども…」くらいの感じだった。 
それでもだんだん慣れて話すこともあったが、
とにかく「板尾ありき」の存在だった。 

板尾が亡くなってからは会ったことはなかった。

466:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 18:46:41.49 ID:P1VUjXiJ0
ただ俺は板尾が紹介してくれた
美大の連中のことはほとんど忘れていた。 
この友人を除いて。 

顔くらいは覚えていたが、
名前までハッキリ覚えている人なんて
ほとんどいなかった。 
ただ、俺は石田さんのことは覚えていた。 

俺は石田さんを初めて見た時から、
なんとなく「可愛い」とは思っていた。 
好きとかそんなんじゃなく、
外から傍観する感じで。 

だから記憶にも割と残っていたのだ。

467:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 18:51:17.51 ID:P1VUjXiJ0
友人「じゃあ原稿一段落したら、美大に来なよ。 
石田も呼んで、話聞く?
そのついでにさ、ほら、美大の中色々見たりする?」 

俺「それはいい考えだね。じゃあそに子も連れてくるよ。」 

友人「きっと彼女も色々話聞きたいかもねwできるだけ友達呼ぶよw」 

そう、板尾の友人は、
俺とそに子と板尾が美大巡りの約束をしたことを 
知っている唯一の人間だった。 
あの時の計画が、こんな形で実行されるとは。 

でも俺は楽しみだった。
そに子もきっと喜ぶだろう。

469:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 19:13:35.18 ID:P1VUjXiJ0
書くの遅くてゴメン… 

お盆にあるコミケの後にするか、前にするかで、悩んだ。 
でも善は急げだって言って、
コミケの前に行くことにした。 

そに子にも話すと、 
そに子「え、今なのww でも嬉しい、すごく」 
と言ってくれた。そに子も、
板尾の死にはショックを受けていたから。 

そに子「どうしよう。スケブ持ってくよね?あとは…」 
そこまでワクワクしてくれると、こっちも嬉しい。 
良かった。 

そして美大に行った。
俺はそに子と二人で向かった。 
正門の前に友人が立っていて手を振った。 
友人「こっちこっちー」 


470:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 19:18:46.94 ID:P1VUjXiJ0
友人「みんな来てくれるかと思ったけどねーw
さすがに夏休みだし予定がw 
でも石田は来てくれたよー良かったね」 
石田「久しぶり!」 
二人はニコニコしてなんだか楽しそうだった。 

俺「久しぶりだね。今日はありがとう。」 
自分でも分かるくらい
もう女性に対しての苦手意識はなくなっていた。 
俺はとにかく早く学芸受験の相談も聞いて欲しかった。

471:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 19:22:52.08 ID:eslB9zldO
続ききてた 
最後まで付き合うぞ

472:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 19:24:32.48 ID:5lCem2w9O
しえん

474:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 19:26:55.44 ID:P1VUjXiJ0
友人「長期休暇中だからねー、
ほとんど建物の中入れないけど 
色々見てまわろうかー」 

美大の中を歩いていると、
色々思い出した。 
よく板尾に案内してもらった。 
一緒に歩いた、
去年のコミケのことも思い出された。 
この計画も本当は…なんて思った。 

なんだかとっても辛くなった。 
そに子がずっと笑っていたのが救いだったかもしれない。 

板尾のおかげでこの子にも会えたし… 
そんな感傷モードに浸っているうちに
美大探訪は過ぎていった。

475:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 19:33:07.89 ID:P1VUjXiJ0
支援ありがとう。
ごめんなんだか書くの辛くて少し遅くなるかも。
許してくれ。 


友人「ほんじゃ、そろそろゆっくり話とかもしたいし、 
俺の家に行ってゲームでもやろうよ」 
友人はゲーム好きだった。 
確かにゆっくり話もしたいとこだったし、
家に行くってのはみんな賛成だった。 

石田「あたしなんか作るねー」 
そに子「わ、わたしも…手伝います…」 

そに子は実家暮らしなので
そこまで料理はできなかった。 
俺は、女性陣は可愛いなあ、なんて
心のなかで思っていた。

477:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 19:39:47.02 ID:P1VUjXiJ0
友人の家につくと、石田さんが料理を作った。 
そに子も少しは頑張ったらしいw 
美味しかった、なんか感動した。 
同級生の女の子が作った料理… 

その後そに子は友人とゲームを始めた。 
俺は色々と石田さんに話を聞くことにした。

478:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 19:52:06.23 ID:P1VUjXiJ0
俺「実は自分、学芸に行って美術の先生になりたくて…」 
石田「らしいね。聞いたよ。あたしも受けたよ〜学芸」 

石田「現実的に考えるなら
母校の高校の美術の先生とかにも相談したら…? 
あたしも高校の時は受験のために
美術の先生と仲良くなったよw」 
石田「田舎だから予備校も長期休暇とかしか行けなかったし」 

俺「なるほどなあ。」 

この日話していて分かったんだが、石田さんと俺は 
地元が一緒だということも分かった。
これには本当に驚いた。

479:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 19:56:30.34 ID:P1VUjXiJ0
石田「華丸君はきっと頭いいんだから、
まず勉強頑張ればセンターで差がつくし 
受験は大丈夫。あたしは応援しちゃうな〜」 

これが美大生の思考なのだろうか。
迷わず応援してくれた。 
俺は自分の補って欲しいところを補ってくれるような、 
そんな存在が現れた気がした。 

石田「華丸君絵を描くの好きなんだね。板尾も上手かったもんね」 
話は板尾の話にもなった。 

同じ地元に受験、板尾の話…共通の話題が尽きることはなく、 
石田さんとは本当に長い時間話している気がした。

481:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 20:02:22.31 ID:P1VUjXiJ0
その日はそんな感じで過ぎた。 
そに子に帰り道でちょっとすねられた。ずっと話していたせいだ。 
そに子「でも学芸受験のこと相談できる相手できてよかったね。 
わたしはそういうの全然分からないし…」 

あんたはエライ子だよ。 

そして、このすぐ後にコミケが来る。 
楽しみ半分、不安半分。 
去年のことが懐かしく感じられた。

482:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 20:05:26.39 ID:P1VUjXiJ0
この時までは、本当に失うものが何もなかったんだと思う。 
夢を追おうが、捨てようが、自分の選択次第だし、自由だった。 

この時までの自分はある種幸せだったなあと思う。 
悩んで、苦悩して。 

色んな人に迷惑かけてみて。

483:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 20:09:11.22 ID:P1VUjXiJ0
そして、夏のコミケが来た。 
夏コミは青春って感じがして、ほんとうに楽しい。 
あくまで個人的感覚だが、
若さと情熱で溢れている。 

俺は友人のスペースで、
そに子と友人と一緒に、本を売った。 
前回同様、マッタリとだが本ははけてくれた。 

すると、予期せぬ人が訪ねてきたのだ。

484:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 20:13:37.25 ID:P1VUjXiJ0
来たのは、石田さんだった。 
石田「よ、頑張ってるねー」 
友人「おっすー」 

俺「あーおつかれー」 
正直、ドキッとしてしまった。 
純粋に、来てくれたことを嬉しく感じた。 

この時、そに子はどんな風に思っていたんだろうか。

485:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 20:16:48.03 ID:P1VUjXiJ0
その後は特にイベントもなく 
コミケ終わった後 
石田さん含めて俺たち4人でメシを食べに行った。 

俺は、その最中も石田さんに
受験関連のことを聞き続けた。 
石田さんに少し惹かれていたのか、 
「美術の先生のなるんだ」
ってことばかり考えていたのか。 
両方だったと思う。 

そに子はどう思っていたのだろうか。

486:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 20:19:37.07 ID:P1VUjXiJ0
その後、定期的に
石田さんから連絡がくるようになった。 
俺はそれが悪い気はしなかった。 
もちろん、そに子への好意は全然生きていたし、 
石田さんとの関わりは
自分でもよく分からない感情だった。 

でも9月に入ると、
そんな寝ぼけたことを言ってられない 
大きな壁にぶち当たる。

487:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 20:23:24.35 ID:P1VUjXiJ0
母の体に癌が見つかった。 
元々俺の家は片親だった。 
母と、社会人の兄。
稼ぎ手も二人いたので、
経済的に困ったことはなかったが。 

兄に一度帰ってくるように言われた。 
母は入院したらしい。 

「これからどうなるんだ?」 
「母さんは、どうなるんだ?」 
混乱した。とりあえず実家に帰ることにした。

490:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 20:29:40.85 ID:P1VUjXiJ0
母は手術をした。 
手術は上手くいった。
しかしリウマチを発症した。 
リウマチとは、手足がかたまって、
時期に動かなくなる病だ。 
それに進行の早いものだったらしい。 

兄「母さんはなんとか大丈夫だったけど、分かってるよな?」 
俺「うん…もう働けないし、段々世話も必要になる、ね…」 

兄「お前大学辞めるとか言ってたけど」 
兄「今まで俺たち散々母さんに迷惑かけてきたんだから」 

俺「……」 

兄「諦めろ。母さん生きているウチに自立して、立派なとこ見せるんだぞ」 

この時俺は号泣していた。 
どうしてこんなことになってしまったんだろう? 
自分が世界で一番不幸なんじゃないか、って思うくらいだった。

491:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 20:36:48.85 ID:P1VUjXiJ0
夢が敗れた気がした。 
夢を追いたい、
でも今から大学に一から行き直したら… 
母が生きてるうちに、
立派な社会人になりたい… 

母にはどれだけ迷惑をかけたか。 
幼い頃から、
俺たち兄弟をずっと育ててくれた。 
いつか恩返しをする。 

そして、俺は人一倍人の死に敏感になってた。 
板尾を失った時のことを思い出して、
どうしようもなくなった。 

諦める。そして真面目に就活して、絵は趣味にする… 
そう、決心した。

492:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 20:38:03.72 ID:/qSLdoGG0
波乱万丈すぎわろた・・・

493:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 20:44:14.84 ID:P1VUjXiJ0
母が退院するまでしばらく俺は実家にいて、 
兄と協力して車を出したり、
病院に行ったりしていた。 

地元にいると大学の友だちと会えなくて辛かった。
もう授業も始まっていた。 
でも、俺はこの「諦める」と決心した時、 
まず最初に石田さんにメールした。
泣きながら。 

特に深い意味はなかったと思う。
今まで散々学芸受験の相談にのってもらったし、 
諦めるなら、はやくそのフシを
石田さんに伝えるべきだと思った。 
もちろんそに子とは電話とかたくさんしていたし。 

俺は石田さんに細かい経緯とかも伝えた。 
今思えば、石田さんには
そんなに込み入った事情まで
言うべきじゃなかったって反省してる。 

でもこういう時って、
本当に誰かに話したくなるんだよな。 
俺辛い、辛いんだよ〜って。

495:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 20:54:00.76 ID:P1VUjXiJ0
話ももう佳境です。
八割くらいきたと思います。 
今日中に終わることを目標にします。ごめん、長くて。 


それから数日経った日の夜、石田さんから、 
「〇〇駅に来て」とだけのメールが来た。 
その駅は俺の実家の最寄りだった。 

駅に行くと、
石田さんが笑ってベンチに座っていた。 
田舎の駅だから、平日夜でも人はまばらだった。

497:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 20:58:11.18 ID:P1VUjXiJ0
石田「ちょうど私も地元に帰ってきたからさー、元気かなと思って」 

明らかに嘘だった。
こんな時期に、大学生が帰郷なんかするか? 
まあ本当に何かあったのかもしれないが。 

俺「そうなんだ」 
石田「直接話したかった…元気かなって。無理してるんじゃないかって」 
石田さんはきまり悪そうに笑った。 

なんて言ったらいいか分からなかった。 
上手く話せなくて
何時間くらいそこに座っていたんだろう。

500:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 21:00:39.02 ID:2vWT++QeO
ハラハラしながらもみてるよ…!もうそろそろで終わりか…

501:名も無き被験体774号+2011/12/13(火) 21:02:31.72 ID:KYvDUGdY0
もうちょいで終わりか… 
結末を楽しみにしてる

502:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 21:04:06.78 ID:P1VUjXiJ0
今思えば、
石田さんは真っ直ぐな人だったんだろう。 
一瞬美保を想起したが、
それは考え過ぎだった。 

石田「華丸くんはさ…そに子ちゃんが大事だよね。」 
俺「誰よりも大事だと思うよ。」 

石田「わたしはさ…ダメかな、ダメかもね…」 
俺「……」 

嫌な予感はした。
告られたらリア充とか言われそうだが、 
この時の精神状態で、
誰かを振るというのは、きつかった。 
なにしろ石田さんとの関係性は失いたくなかった。

504:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 21:06:27.45 ID:KTrBpjk70
石田さんずるいぞーこのタイミングはずるいぞー

505:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 21:07:44.35 ID:sxn5ziRO0
ここらで焦らしてくれてもいいんだぜwwww 
アッサリ終わるには惜しい話だ

506:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 21:07:46.30 ID:P1VUjXiJ0
石田「あたしはね…華丸くんが好きなんだ…」 

嬉しいことである。とても嬉しい。 
でも、今言わないで欲しかった。
もっと別に仲良くやっていく方法もあったはずだ。 

俺「ありがとう…でも…俺は…」 

石田さんは強かった。
表情一つ変えなかった。
覚悟もしていたのかな。 

石田さんは笑って、 
石田「じゃあさ、儀式しようよ!」 
と言い出した。 

俺「儀式…?」

508:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 21:08:46.22 ID:P1VUjXiJ0
>>505 ありがとうwで
もなんやかんや言って実はまだけっこう長いから、 
今日中には終わらないかもw

509:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 21:14:21.47 ID:P1VUjXiJ0
石田「わたくし、石田ゆり子は、博多華丸のことが、大好きです。 
良かったら…付き合ってください!」 

俺「ありがとう、ごめんなさい…」 

石田「ふられちゃった」 
石田さんはニシシとばかりに苦笑いした。 

正直、その時俺は気持ちが持って行かれるんじゃないかと思った。 

石田「恋人がいる人に告白するなんて、あたし卑怯だー」 
石田「そに子ちゃんはいい子だもんね、あたしもがんばる」 

何も言えなかった。

511:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 21:17:31.10 ID:P1VUjXiJ0
石田「華丸君は頑張りすぎないでね」 
石田さんはそう言って改札をくぐっていった。 

最後まで何も言わなかった気がする。 
遠くで手を振られて、
ただ振り返すしかなかった。 

あまりに叙情的な景色だったから、
ハッキリと覚えている。 
自分でもなんだこの状況?ってなった。 

心にぽかんと穴が開いたみたいだった。

514:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 21:20:00.99 ID:OdZOWMJl0
俺も辛いわこんなの

515:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 21:21:11.09 ID:P1VUjXiJ0
さて、このタイミングで申し訳ないのですが、
ちょっと晩飯を食べてきます。 
なので30分ほど時間あけて、
また再開しますね〜

516:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 21:32:55.46 ID:OdZOWMJl0
おk 
待ってるよ〜

517:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 21:43:56.57 ID:J+ORkLJU0
このスレくる度に泣いてる

519:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 22:11:21.17 ID:P1VUjXiJ0
晩御飯からもどりました。 
正直、こんなにたくさんの人に自分の話を 
見てもらえるなんて思ってもいなかったです。 
ここまで続けるのは大変でしたが、
みんなの応援のお陰です。 

あと少しになってきましたが、
最後まで付き合って頂けたら嬉しいです。

521:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 22:20:50.22 ID:Wl6eAC7i0
おかえりー 
ゆっくりでも見てるよ

522:名も無き被検体774号+2011/12/13(火) 22:22:11.24 ID:EcMflnFy0
泣きそうだよ 

ゆっくりでいいから投下してってくれ

526:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 22:45:45.48 ID:P1VUjXiJ0
石田さんとの時間は、夢
を見ているかのようだった。 
まるで、中学生に戻ったかのような、
そんな青臭い自分を感じた。 

家に戻ると兄が玄関にいた。 
兄「女か。」 

昔から兄は鋭かった。 
母の病院に行かない夜は
何があってもいいように 
一緒に家にいて、
二人で格ゲーをやっているのが普通だったからだ。 
遅い時間に帰ってきたから不審に思ったんだろう。 

兄「地元の友達にでも会ってきたのか」 
俺「ま…そんなとこ…」 

528:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 22:52:33.79 ID:P1VUjXiJ0
俺は、次の日かかりつけの眼科に行った。 
思えば、小さい頃はよく母と病院にきたものだ。 
この眼科もそうだった。 

俺は診察の時先生に言った。 
俺「実は母が…」 

先生「そんなことがあったのか…華丸君が小さい時から知ってたからなあ 
辛いけど、今はそばにいてあげて」 

先生は初老のじいちゃんだ。 
これが田舎の地元のいいところだ。 

地元に戻れば、家族みたいな人がたくさんいる。 
俺は元気をだそうと思った。

529:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 22:58:29.16 ID:P1VUjXiJ0
このじいちゃんにも、
半年に一回の受診でしか会わないのに、 
こうやって心配してくれるんだ。 
石田さんだって、
心配だったんだろう… 

母のことで鬱屈としていた俺は
元気をだそうと思った。 

じきに、母は退院した。
癌の方は一旦おk、ということになったようだった。 
これからは自宅で、
クスリで再発防止の抗がん治療をするようだった。 

しかしリウマチがあったので、
しばらく自宅で療養することになった。 

あまり大学を休み続けるわけにもいかなかったので、
俺は実家から戻ることにした。

530:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 23:05:12.39 ID:P1VUjXiJ0
久しぶりにもどってきた。 
大学、絵、何もかもが久しぶりに思えた。 

そに子がすごく心配してくれた。 
なんだかほっとした。 

だんだんと、日常をとりもどしていく気がした。 
できる限り、実家のことを思い出さないようにしていた。 

逃げていたのだろう。
向き合うのが辛かった。

531:華丸 ◆vk8BsG8fow2011/12/13(火) 23:08:14.48 ID:P1VUjXiJ0
目的を失った俺は
どうしたらいいか分からなかった。 
夢…就活… 
この頃絵を描くのがすごくつまらなくなった。 

なんで描いているんだろう? 
分からなくなった。 
板尾がいたらなんて言ってくれたろう。 
なんでアイツはあんなに
絵を描くのが好きだったんだろう。 

俺は分かって気になっていたが、
分かっていなかったんだ。

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